ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が直面する製品開発や生産プロセスの課題に対応するための補助事業です。この事業は、技術の導入や設備投資、研究開発など、企業の成長と効率化を支援するための補助金となっています。
「ものづくり」と聞くと、製造業における工作機械が対象と考える方も多いでしょう。しかし業種に関係なく、生産性向上につながる設備の導入であれば補助対象になります。そのため、採択事例にはサービス業・小売業・農業などさまざまな業種の事業者があげられています。さらに条件を満たせば、個人事業主も応募が可能です。
この記事では、ものづくり補助金の概要や対象者、対象経費、活用例、申請方法、採択率を上げるポイントなどを詳しく解説します。ものづくり補助金の活用について検討している方は参考にしてください。
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金の正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」で、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が、中小規模事業者などを支援する目的で実施している補助金です。
雇用の多くを占める中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援します。
ものづくり補助金の全体像には以下のような申請枠があります。 ※ものづくり補助金18次締切分参照
ものづくり補助金の申請枠について
1. 省力化(オーダーメイド)枠
人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する枠です。
枠・類型 | 補助上限額 ※カッコ内は大幅な賃上げを行う場合 | 補助率 |
オーダーメイド枠 | 5人以下 750万円(1,000万円) 6~20人 1,500万円(2,000万円) 21~50人 3,000万円(4,000万円) 51~99人 5,000万円(6,500万円) 100人以上 8,000万円(1億) | 中小企業1/2 小規模・再生2/3 ※補助金額1,500万円 までは1/2もしくは2/3、 1,500万円を超える部分は1/3 |
2. 製品・サービス高付加価値化枠
◼️通常類型
革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援
◼️成長分野進出類型
今後成長が見込まれる分野(DX・GX)に資する革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援する枠です。
DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略で、ITやデータを活用して業務やビジネスモデルを変革することをいいます。
GXとは、グリーン成長の略で、温室効果ガスの排出削減や環境負荷の低減に貢献することをいいます。
枠・類型 | 補助上限額 ※カッコ内は大幅な賃上げを行う場合 | 補助率 |
通常類型 | 5人以下 750万円(750万円) 6~20人 1,000万円(1,250万円) 21人以上 1,250万円(2,250万円) | 中小企業1/2 小規模・再生2/3 新型コロナ回復 加速化特例2/3 |
成長分野進出類型 (DX・GX) | 5人以上 1,000万円(1,100万円) 6~20人 1,500万円(1,750万円) 21人以上 2,500万円(3,500万円) | 2/3 |
3. グローバル枠
海外事業を実施し、国内の生産性を高める取組みに必要な設備・システム投資等を支援する枠です。
枠・類型 | 補助上限額 ※カッコ内は大幅な賃上げを行う場合 | 補助率 |
グローバル枠 | 3,000万円(3,100万円~4,000万円) | 中小企業1/2 小規模2/3 |
前年度からの変更点
2024年のものづくり補助金は、さまざまな変更点があり、特に省力化がキーワードとなりそうです。省力化に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する「省力化(オーダーメイド)枠」が新設されました。
ものづくり補助金の対象者とは
ものづくり補助金の対象者は、以下の条件を満たす中小企業や小規模事業者です。
- 製造業、商業、サービス業、建設業、農業、林業、漁業、鉱業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業、教育・学習支援業、医療・福祉、その他のサービス業のいずれかに該当すること
- 中小企業基本法に定める中小企業者であること(個人事業主を含む)
- 申請時点で、補助対象経費に係る設備・システム等の発注・契約を行っていないこと
- 補助対象事業の実施に必要な設備等を所有していないこと
- 補助対象事業の実施により、生産性の向上や新規事業の創出などの効果が見込まれること
- 補助対象事業の実施に必要な自己資金を確保できること
- その他、公募要領に定められた事項に適合すること
※詳しい内容については公式サイトをご確認ください。 ものづくり補助金公式ホームページ
対象になる経費とは
ものづくり補助金の対象になる経費は、以下の主に5つのカテゴリーに分類されます。
対象経費 | 内容 |
機械装置・システム構築費 | 補助事業のために使用する機械・装置やソフトウェア・情報システムの 購入・構築・借用、改良・修繕・据付けに要する経費。単価50万円以上 の設備投資が必須。 |
運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
技術導入費 | 知的財産権等の導入に要する経費 |
知的財産権等関連経費 | 特許権等の地て財産権等の取得に要する弁護士の手続代行費用等 |
外注費 | 新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を 外注(請負、委託等)する場合の経費 |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用に関する経費 |
原材料費 | 試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費 |
海外旅費※1 | 海外渡航及び宿泊等に要する経費 |
通訳・翻訳費※1 | 通訳及び翻訳を依頼する場合に支払われる経費 |
広告宣伝・販売促進費※1 | 海外展開に必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、 展示会出展等、ブランディング・プロモーションに係る経費 |
ものづくり補助金の活用例
ものづくり補助金の活用例を、以下に3つ紹介します。
業種:食品製造業
新事業の内容:高付加価値商品専用・量産化対応設備導入による生産体制構築と販路開拓
活用内容:商品製造と自動包装機の導入し、生産性が大幅に向上。衛生管理体制の向上により冷凍商品の品質保持により取引店舗の拡大から全国展開へ可能とした。
業種:製造業
新事業の内容:防災性に富む特殊合板を使用した店舗内装家具
活用内容:手作業によって実現できなかった大量注文に対して、専門知識や技術がなくても動かすことのできる自動加工機械を導入し、受注案件の増加に繋がった。防災性に富む特殊素材を使用し他社との差別化が可能となった。
業種:繊維工業
新事業の内容:自社独自の染色技術を活用した新商品の販路拡大と生産性向上
活用内容:染色工程を新型ボイラ及び自動洗浄機によって短縮することによって作業効率化が大幅にアップ。生産性が大幅に向上したため、今後は海外進出を視野に販路拡大を行う。
ものづくり補助金の申請に必要な書類
ものづくり補助金の申請に必要な書類は、以下の通りです。
- 事業計画書:補助事業の概要や目的、計画期間、予算などを記載した書類
- 補助金交付申請書:補助金を申請する際に提出する申請書
- 見積書:機械装置や設備改善費などの経費に関する見積もり書
- 財務諸表:企業の財務状況を示す書類(決算書、貸借対照表、損益計算書など)
- 従業員数や売上高などの事業所データ:企業の規模や業績に関する情報
- その他必要な書類:補助金の公募要領や申請書類に記載されている書類
申請に必要な書類は、公募要領や補助金交付申請書に詳細が記載されています。申請前に必要書類を確認し、適切に用意することが重要です。
申請手順・具体的な流れ
ものづくり補助金の申請手順・具体的な流れは、以下の通りです。
申請前に、事業内容や補助対象経費の確認などを行うために、事前相談を行うことが推奨されます。事前相談は、各地域のものづくり補助金事務局に電話やメールで予約をすることで受けることができます。
※申請にあたっては、事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要となります。未取得の方はお早めに利用登録を行ってください。
申請書類は、ものづくり補助金の公式サイトからダウンロードできます。申請書類は、必要事項を記入し、必要な添付書類を準備します。申請書類は、電子データと紙媒体の両方で提出する必要があります。
申請書類は、ものづくり補助金の公式サイトからアップロードすることで提出できます。また、紙媒体の申請書類は、郵送または持参で提出します。
申請書類の内容に基づいて、書類審査が行われます。書類審査では、事業の内容や効果、補助対象経費の妥当性などが評価されます。
※交付候補者決定前において、一定の投資規模の事業計画に取り組む事業者に対して、口頭審査を実施する可能性があります 詳しくは公式サイトをご確認ください。
書類審査に合格した申請者には、採択通知が送付されます。採択通知には、補助金の額や補助率、補助対象経費の内訳などが記載されています。採択通知を受け取った申請者は、補助対象経費に係る設備・システム等の発注・契約・導入・運用を開始することができます。
補助対象経費に係る設備・システム等の導入が完了したら、中間報告を行う必要があります。中間報告では、導入状況や効果測定などを報告します。
補助対象経費に係る設備・システム等
- 補助対象経費に係る設備・システム等の運用が完了したら、最終報告を行う必要があります。最終報告では、運用状況や効果検証などを報告します。
- 補助金の交付
- 最終報告が承認されたら、補助金の交付が行われます。補助金の交付は、補助対象経費の実際の支出額に応じて行われます。
申請スケジュール
現在発表されている直近のスケジュールです。
補助事業実施期間は交付決定日から2024年12月10日までとなります。
17次締切 | 18次締切 | |
公募開始日 | 令和5年12月27日(水) 17時 | 令和6年1月31日(水) 17時 |
申請開始日 | 令和6年2月13日(火) 17時 | 令和6年3月11日(月) 17時 |
申請締切日 | 令和6年3月1日(金) 17時 | 令和6年3月27日(水) 17時 |
採択率を上げるポイント
ものづくり補助金の採択率は、ものづくり補助金の採択率は公募によって異なりますが、一般的には約40%〜60%の範囲です。採択率を上げるためには、以下のポイントに注意して申請書類を作成することが重要です。
事業の目的や内容を明確にする
事業の目的や内容は、具体的かつ明確に記述することが求められます。事業の背景や課題、目標や成果、計画やスケジュールなどを詳細に説明することで、事業の必要性や妥当性をアピールすることができます。
補助対象経費の妥当性を示す
補助対象経費は、事業の目的や内容に対して必要かつ適切なものであることを示す必要があります。補助対象経費の内訳や見積書、設備・システムの仕様や機能などを具体的に記述することで、補助対象経費の妥当性を示すことができます。
事業の効果や影響を評価する
事業の効果や影響は、定量的かつ客観的に評価することが求められます。事業の効果や影響を測定するための指標や方法、基準や目標値などを設定し、事前・事後の比較や分析を行うことで、事業の効果や影響を評価することができます。
お気軽にお問い合わせください
ものづくり補助金に関するご質問やご相談は、お気軽にお問い合わせください。ものづくり補助金事務局は、各地域に設置されており、電話やメールで対応しています。ものづくり補助金の公式サイトから、お近くの事務局の連絡先を確認することができます。
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者の成長と効率化を支援するための補助金です。ものづくり補助金の活用について検討している方は、ぜひこの機会に申請してみてください。ものづくり補助金18次の申請期間は、2024年3月27日までです。お早めにご準備ください。