ネットショップは近年シェアを伸ばしており、最近では多くの小売店がECサイトを開設しています。これからECサイトを開設しようと考えている方は、まずはメリット・デメリットを押さえて開設するべきかどうかよく検討することが大事です。
本記事ではECサイトの市場規模や将来性について解説したうえで、ECサイトのメリット・デメリット、販売形式や種類について紹介します。ECサイトにもさまざまな種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあるため、これからECサイトを開設するならそれぞれの違いを理解し、最適な形でECサイトをはじめましょう。
ECサイトの市場規模や将来性とは?
ECサイトを開設するうえで、まずはECサイトの仕組みや歴史、市場規模や将来性について一通り説明します。結論としてECサイトの市場規模は大きく、年々シェアを拡大しているため、非常に将来性があるといえるでしょう。
ECサイトとは?仕組みなど紹介
EC(Electronic Commerce)とは電子商取引のことであり、ECサイトとはネットで商品売買をすること、つまりネットショップのことです。有名なECサイトとしてはAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどが挙げられます。
ECサイトは近年普及した印象がありますが、国内では1997年に楽天市場が開設しており、20年以上の歴史がある販売形態です。そして2000年ごろにはPCの普及、2010年ごろにはスマートフォンの普及により、ECサイトは近年急速にシェアを広げているのです。
ECサイトの市場規模や推移・予測
物販系のECサイトの市場規模は2020年時点で12兆2,333億円(令和2年「電子商取引に関する市場調査」経済産業省より)であり、2013年時点の5兆9,931億円から大きく市場規模を拡大しました。
また同調査によれば、すべての商取引において電子商取引の市場規模が占める割合であるEC化率が8.08%になっており、商取引きのなかでもECサイトがシェアを拡大していることがわかります。また新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要もECサイトが普及した要因の一つでしょう。
このような背景もあってECサイトが広く一般に浸透したため、今後もさらにシェアを拡大することが予測されます。
ECサイトの今後・将来性は?
AIの発展や5Gの普及でECサイトはさらにシェアを拡大することが予想されるため、ECサイトは将来性のある領域といえます。
まずAIの発展についてですが、ユーザーの好みにより最適化された商品を自動で勧められるようになり、より簡単に消費者に対して商品をPRできるようになるでしょう。
また5G通信によってより多くのデータを瞬時に転送できるようになり、4G以上に大量の情報を消費者に対して提供できるようになりました。今後はリアルタイムの動画で売り場を見られるような極めてリアルに近い買い物もインターネット上で可能になり、ますます便利になることが予想されます。
このような技術の発展がECサイトの普及を後押しし、将来的にはさらにシェアを拡大することが予想されるのです。
ECサイトのメリット7つ|強みを理解して適切な活用を
ECサイトのメリットを7つ紹介します。
各メリットについて具体的に解説します。
メリット1. 場所や時間を選ばない
ECサイトは実店舗と違ってお店を開けたり閉めたりする必要がないので、メンテナンスが入るなど特別な場合を除けば24時間どこでも商品を販売することが可能です。ユーザーがいつでも買い物ができるため売上向上につながりやすく、また店舗側も店番をする必要がないため時間をとることなく商品を売ることができます。
住んでいる地域を問わずどこでも顧客に対して商品を販売できるというのが、ECサイトの大きなメリットといえるでしょう。ECサイトは小売り経験がなくても商品を販売しやすい仕組みになっています。
メリット2. 世界中に販売できる
インターネットに国境はないので、日本全国で商品を販売できるだけでなく海外のユーザーに対しても商品を販売できます。実店舗だと海外への販売は文化や言語の壁があるためハードルが高く、現地へ何度もいって商圏分析をおこない、多額のコストをかけて出店しなければいけません。
しかしECサイトなら言語を対応させれば海外のユーザーでも利用することができるので、実店舗と比べてハードルはかなり下がります。ただし海外へ商品を発送する場合には国内よりも配送料が高くなるので、その点は注意しましょう。
メリット3. 初期費用や固定費を抑えられる
ECサイトであれば店舗を出店するためのテナントなどを借りる必要がなく、内装費や光熱費などもかからないため初期費用や固定費を抑えて事業をおこなえます。
実店舗を開業する場合にはおおよそ500~1,000万円ほどの費用がかかるので、ある程度商品を揃えて売上を出さなければなりません。一方ECサイトなら初期費用や固定費は抑えられるため、最小限の商品だけでも事業がはじめられます。
初期費用や固定費の安さは事業をはじめるハードルの低さにつながるので、「小売り業をはじめたいけど資金が十分に用意できない」という方にとって、ECサイトは非常に便利なツールといえるでしょう。
メリット4. データ分析・活用がしやすい
ECサイトで商品を販売すると顧客のデータが記録されるので、.データ分析に活用しやすいというメリットがあります。顧客の属性がわかればとどういった層に人気があるのかがわかるので、今後の商品開発やプロモーションに役立てることができます。
顧客にアンケートを取るなどしてデータを収集するところから始めないければいけない実店舗に対し、購入した時点で個人情報が紐づけられるECサイトはデータ分析に非常に便利といえるでしょう。またターゲットが明確になればインターネット広告などにいかすこともできます。
メリット5. 実店舗に比べて管理がしやすい
実店舗のように商品の現物を陳列する必要がなく、在庫を最小限に抑えて受注生産で販売することが可能なので管理がしやすいです。在庫を常に用意していなと常に売れる商品を優先して準備しなければなりませんが、ECサイトであれば季節性のある商品などでも予約販売などにしてリスクなく商品を販売することができます。
また在庫を保管するための大型の倉庫なども必要いので、管理がしやすいだけでなく固定費を抑えて事業をおこなえるというメリットもあるでしょう。
メリット6. 働きやすい職場環境を作りやすい
ECサイトには販売員を常に配置する必要がないので、働きやすい職場環境を作れるというメリットがあります。小さな小売店などでは人件費を多く割けず、最小限の販売員で営業することが多いため、スタッフの負担が大きくなりがちです。しかしECサイトであれば商品が売れたときの発送手続きや在庫管理、問い合わせ対応などができれば事業をおこなえるので、スタッフの負担は減ります。またリモートで仕事をすることもでき、柔軟な働き方ができるのもメリットでしょう。
事業を拡大するにはECサイト専門のプロモーションやマーケティングが必要なので、ECサイトではそういった活動に人員を割くことになります。
メリット7. 異業種や新たな商材販売にチャンレジしやすい
初期費用の安さや商圏の広さから、ECサイトでは異業種や新たな商材販売にチャレンジしやすいというメリットがあります。実店舗で新たな商品を販売するにはまず在庫を揃え、それに合わせてレイアウトや内装を変更する必要があるので、簡単には新たな商材販売にチャレンジできません。しかしECサイトであれば最小限の品揃えではじめることができ、うまくいかなければ撤退してまた別の商品を考えるということが比較的簡単におこなえます。
異業種や新たな商材販売にチャレンジしやすいということはそれだけヒットを生むチャンスも掴みやすいということなので、いろいろな商品を試してみたいという方には向いているでしょう。
ECサイトのデメリット7つ|導入前に確認すべきポイントは?
ECサイトのデメリットを7つ紹介します。
各デメリットについて具体的に解説します。
デメリット1. 競合が多く価格競争になりやすい
ECサイトはインターネット上のすべてのECサイトが競合になるので、価格競争になりやすいというデメリットがあります。実店舗であれば基本的には自分のお店の商圏エリアにある店舗のみが競合になりますが、ECサイトには地域がないので商圏がインターネット全体になり、多店舗との競争になることは避けられません。
そして競合が多いとどうしても価格競争になりやすいため、安い価格で販売せざるを得ず売り上げが伸びないこともあります。このような価格競争を避けるためには、マーケティングを入念におこないターゲットに対して的確にプロモーションすることが重要です。
デメリット2. 成果が出るまでに時間がかかる
ECサイトは手軽にはじめやすい一方で、成果が出るのに時間がかかる傾向があります。インターネット上で自社のECサイトを見つけてもらうには広告やSNSなど集客活動が必要ですが、結果が出るのに時間がかかる場合が多いのです。
たとえばSNSマーケティングであればユーザーの興味がある投稿を毎日おこない、地道にフォロワーを増やしてファンを作らなければなりません。SEO対策もGoogleに評価されて検索で上位表示されるのには時間がかかります。
初期費用をかけ過ぎると費用を回収できる前に運営できなくなる恐れがあるので、成果が出るのに時間がかかるということを頭に入れておきましょう。
デメリット3. 集客が難しい
実店舗とは販売の仕方が異なるため、実店舗の営業に慣れている方にとっては集客が難しく感じることがあるでしょう。チラシや看板、ダイレクトメールといった実店舗の広告活動はECサイトではほとんど使えないため、インターネットに適した集客活動をおこなう必要があります。
具体的な方法としてはWEBマーケティング、SNSマーケティング、リスティング広告、SEO対策、メールマガジンなどさまざまな手法がありますが、販売する商品や顧客に合わせて最適な施策をおこなう必要があります。
デメリット4. 顧客対応がしづらい
ECサイトでは顧客と直接コミュニケーションがとれないので、顧客対応がしづらいというデメリットがあります。実店舗であれば興味を持っている商品について説明するなどの販促が可能ですが、ECサイトでは写真や文章で商品の魅力を伝える必要があります。
また顧客のなかには販売員でお店を選ぶ人もいますが、顔が見えないECサイトではそういった顧客を獲得することもできません。顧客とコミュニケーションをとって信頼関係を築くには、メッセージのやり取りやメルマガなどで定期的に接点を作るなどの手法があるので、ECサイトに適した形で顧客対応をおこないましょう。
デメリット5. 商品の魅力が伝わりにくい
ECサイトは実際に商品を見て確認することができないため、商品の魅力が伝わりづらいというデメリットがあります。衣類などの場合は店頭に行けば試着ができますが、ECサイトの場合試着することもできないので、購入のハードルは上がります。こうした顧客とのミスマッチは返品の原因にもなるでしょう。
そのためECサイトでは手に取らなくても商品の魅力を伝える工夫が必要です。写真を豊富に乗せたり説明文を充実させたりすることで、商品が届いた際にイメージとのギャップを生まないよう工夫しましょう。
デメリット6. ITの知識・人材が必要になる
ECサイトを開始するにはECプラットフォームでサイト制作をする必要があるため、ITの知識や人材が必要です。WEBリテラシーがないとトラブルがあった時に対処できない可能性があるので、ECサイトをはじめるのであれば最低限の知識は身に付ける必要があります。
モールやASPカートのようなプラットフォームであれば高い技術力は必要なく、WEBリテラシーに自信がなくても事業をおこなうことは可能です。ただしカスタマイズ性に優れたECサイトにするのであればオープンソースやパッケージを使用する必要があるので、IT人材を確保してサイト構築をしなければなりません。
デメリット7. 構築・運用費がかかる
ECサイトの構築は基本的に実店舗よりも安い費用でおこなえますが、作りたいサイトによっては高額の費用がかかる場合もあります。たとえばフルスクラッチで大規模なECサイトを作る場合には1,000万円以上の費用がかかるので、ECサイトだからといって初期費用が安く済むとは限りません。
初期費用や固定費を抑えて事業をおこなうには、モールやASPカートなどを利用して開設するのがおすすめです。ただしモールやASPカートはカスタマイズ性が低いため、どのようなサイトを作りたいのかをよく考えて費用を調整しましょう。
ECサイトにおける7つの販売形式・種類
ECサイトの販売形式・種類には、以下のようなものがあります。
・自社EC
・ショッピングモール型
・越境EC
・単品EC
・オムニチャネル型
・ダウンロード型
・サブスク型(定期販売)
まず販売の種類は大きく2つに分けることができます。一つは自社が独自に構築・運営する自社ECサイトであり、もうひとつはすでにあるWEBサイト上に店舗を出店できるショッピングモール型です。
そのほか越境EC、単品EC、オムニチャネルなどさまざまな種類があるので、詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてください。
ECサイトの事例
自社でネットショップを作るうえで参考として、ECサイトの成功事例を簡単に紹介します。
オムニチャネル戦略の成功モデルとなるのが「ユニクロ」や「@COSME(アットコスメ)」、ファンの育成に成功したのが「北欧、暮らしの雑貨店」や「たねや・CLUB HARIE」、ユーザーインターフェイスにこだわって顧客に離脱させず購買行動につなげたのが「ケンコーマヨネーズ」や「ZOZOTOWN」などです。
ぜひそれぞれのECサイトへアクセスして実際に確かめてみてください。また下記の記事でもより詳しくECサイトの成功事例を紹介しています。
メリット・デメリットを理解して、拡大するEC市場の波に乗りましょう
ECサイトは今後ますますシェアを拡大することが予測される、将来性のある分野です。場所や時間を問わず世界中に商品を販売できるので、実店舗を持つことなくヒット商品を生み出すことも可能でしょう。
ただし無策でECサイトを開設しても競合に埋もれてしまうので、マーケティングや集客方法を事前によく考えることが重要です。またECサイトではユーザーが直接目で見て商品を確認できないため、商品の魅力を伝えるための工夫も必要でしょう。本記事で紹介したメリット・デメリットをふまえ、最適なECサイトを開設してください。